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位置分解電子エネルギー損失分光技術を用いて、次世代全固体Liイオン電池内部の電気化学反応のナノレベルでの可視化に成功 〜太陽光から熱への変換効率を正しく測るための、世界初の評価技術〜


 本研究成果は、7月4日(東京;東大武田ホール)、7月11日(名古屋;愛知県産業労働センター(ウインクあいち))、7月25日(大阪;阪大中之島センター)、に開催するJFCC/2014年度研究成果発表会で発表いたします。なお、本研究成果は,NEDO「革新型蓄電池先端科学基礎研究事業」(通称RISINGプロジェクト)からの委託研究として得られたものです。


 携帯用電子機器に広く用いられているリチウムイオン電池(LIB: Lithium Ion Battery)は、他の電池に比べて小型かつ高容量に蓄電できる利点を持っているため,再生可能エネルギー(風力発電や太陽光発電)の蓄電やハイブリッド自動車、電気自動車の動力源としても使用されつつあり,環境問題の解決に一役を担う電池として期待されています。

 現在、一般的に普及しているLIBは、正極と負極の間に可燃性の有機電解液が満たされていますが、電解液の代わりに不燃性の固体電解質を用いた全固体LIBは、安全性や信頼性の問題を克服できる利点があるため、世界中で研究開発が進められています。全固体LIBを実用化させるためには、電極/固体電解質の界面をLiイオンがスムーズに移動できるような界面構造にする必要があり、界面近傍で起こる電気化学反応の可視化が求められています。

 本研究では,透過型電子顕微鏡(TEM)技術の一つである「位置分解電子エネルギー損失分光法(SR-EELS)」を用いて、Liの分布、結晶構造の変化、電池材料に含まれる遷移元素や酸素の電子状態の変化をナノスケールで観察することに成功しました。この結果により、電池内部で起こる電気化学反応のメカニズムがわかり、Liイオンがスムーズに移動する高性能なLIBの開発に役立つものと考えています。


【詳細】

 図1(a)は、本研究で用いた全固体LIBの模式図を示します。固体電解質としてAl, Si, GeをドープしたLiTi2(PO4)3を成分とするイオン伝導セラミックスを使用し、正極にはLiCoO2電極を、負極には「その場形成負極」と呼ばれる特殊な電極を使用しています。図中の金(Au)と白金(Pt)は各電極の集電を取るための電極です。Auに正、Ptに負の電圧を印加すると、LiCoO2からLiイオンが脱離し、Pt下面の固体電解質にたくさん溜まります(図中、オレンジの部分)。ある濃度以上のLiイオンが溜まりますと、その部分の固体電解質が不可逆分解を起こし、その結果、その部分が負極材料として作用するようになります。この負極を、「その場形成負極」と呼ばれており、2005年に京大の小久見、入山らによって発見されました。その場形成負極と固体電解質の界面は、原子レベルで結合しているため、Liイオンの移動が極めてスムーズで、全固体電池の問題点を解決する可能性があります。そこで本研究では、その場形成負極がどのような電気化学反応によって形成されるかを、TEMおよび位置分解電子エネルギー損失分光法(SR-EELS)を用いて解明しました。

 図1(b)は、その場形成負極/固体電解質界面を観察したTEM像です。ピンク色の破線を境にコントラストが変化していることがわかります。破線より上部の領域が形成された負極、下部の領域が固体電解質です。図1(c)は、SR-EELS法により観察されたLiの分布です。色が明るいほどLi濃度が高いことを示しています。Liイオンがたくさん溜まることにより、固体電解質の結晶が壊れアモルファス(非晶質)になっていることがわかりました。また、固体電解質には遷移元素であるチタン(Ti)や酸素(O)が含まれるため、TiとOの電子状態がどのように変化するのかを調べました(図1(d)、(e)に示すSR-EELS像参照)。その結果、ある濃度以上のLiイオンが溜まるとTiが電荷補償し、Tiの電子状態がTi4+からTi3+になることがわかりました(図1(f)にLi濃度分布、Ti3+とTi4+の分布を参照)。また、Oも同様に何らかの電荷補償に寄与することもわかりました。さらに、図1(e)に示すOのSR-EELS像から、固体電解質に含まれるOとOの平均距離が、Liイオンが入り込むために膨張して大きくなっていることがわかりました。その平均距離は0.030 nm (= 30 pm)だけ大きくなっていることがわかりました。以上のように、Liイオンが負極側固体電解質に溜まることにより、結晶の構造変化のみならず電子状態の変化も伴い、密着した界面が形成されることが明らかになりました。今後このような界面構造を持った高性能な電池が開発されることを期待しています。






図1
(a)全固体LIBの模式図.充電時、Liイオンが負極側に溜まることによって固体電解質が分解し、その場形成負極が形成される。
(b)負極が形成された後のTEM像。コントラストが異なった層(アモルファス層)が観察できる。
(c)LiのSR-EELS像。Ptに近いほど高い濃度のLiが溜まっていることがわかる。
(d)TiのSR-EELS像。Tiの2本のスペクトルが左へ急にシフトしており、LiによってTi4+ → Ti3+に電子状態が変化していることを示す。
(e)OのSR-EELS像。Oのスペクトルも、Li濃度が高い領域で左へシフトしていることがわかる。つまり、Oの電子状態も変化している。
(f)Li濃度分布((c)のA-B間)とTi3+、Ti4+の領域。
(g)Liが高濃度に溜まることによってO - Oの平均距離が0.03 nm大きくなっていることがわかる。つまり膨張していることを示す。


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