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世界が驚愕する簡易型の原子レベル観察装置を開発 〜サイズ・価格を従来品の数10分の1以下に可能〜


 電子顕微鏡の高性能化(分解能の向上)を図る方法として、電極2枚だけというシンプルかつコンパクトな装置の開発に成功しました。本技術により、従来の数10分の1の低コストで電子顕微鏡を高分解能化することができます。今後、この装置の普及により、大学等の研究機関での高度解析のみならず、製造メーカーにおける検査・解析の高精度化などを通じて、広く社会に貢献することが期待されます。

 本成果は、ファインセラミックスセンターと名古屋大学、大阪電気通信大学、(株)真空デバイス、名城大学、近畿大学との共同研究によって得られたものです。


1.本研究の概要
 電子顕微鏡は、ナノテク産業など様々な分野において必須の解析技術として広く活用されています。電子顕微鏡に求められる性能の一つが高い分解能ですが、それを向上させるためには、顕微鏡のレンズに現れるボケ(球面収差)を補正することが必要です。補正装置として現在実用化されているのが、多くの特殊レンズを組み合わせたもの(多極子型球面収差補正器)ですが、この装置は複雑かつ大型で、また非常に高価(1億円程度以上)なため、大学等の研究機関でしか使用されておらず、広く普及していませんでした。

表1. 従来品と開発装置の比較
  構造 サイズ 価格 性能
従来品
多数レンズの複合構造
コンピュータ制御が必要
電子顕微鏡に改造が必要
数10cm
以上
1億円程度以上 同等の
分解能
開発装置
電極2枚のみ
コンピュータ制御や
装置改造は不要
数mm〜
数cm
数100万円
以下

 これに対し、本研究で新規開発した装置は、簡易・超小型・安価で同等の性能を発揮するものです。わずか2枚の薄板電極を平行に配置し、10V程度の電圧を加えるだけの極めてシンプルな構造で、電極の一つにはドーナツ状の孔、他方には円形の孔を設けており、その間に発生する電場を制御してボケ(球面収差)を補正します。
 本装置は、数mm〜数cm程度というコンパクトなものです。このため、電子顕微鏡に組み込む際に、従来装置のように電子顕微鏡本体の改造を必要とせず、簡単に導入することが出来ます。また、併用するのは直流電源1つで複雑な制御などは必要ありません。このため、従来装置と同等程度の分解能が得られるにも関わらず、低価格(数100万円以下)で搭載可能です。この技術の普及により、高分解能型の電子顕微鏡が飛躍的に広まることが期待できます。


2.本研究の詳細
 開発した簡易型コンパクト球面収差補正器の模式図を図1(a)に示します。2枚の電極(それぞれ円環状、円形の孔を有する)を平行に配置し、そこに定電圧を印加して発生する電場を利用して球面収差をキャンセルするものです。本装置を我々はACEコレクタ(Spherical aberration corrector using Annular and Circular Electrodes)と名付けました。図1(b)は製作した装置の外観写真で、その先端部分に(a)の電極が設置されています。両電極にはケーブルを介して電圧が印加される構造になっています。本装置を電子顕微鏡に挿入した状態が図1(c)です。電子顕微鏡本体に元々備えられていたポートに取り付け、さらに市販の定電圧電源と同軸ケーブルで接続しただけで、特段の改造はしていません。
 ACEコレクタを用いて得られた走査型透過電子顕微鏡(STEM)像を図2に示します。観察試料は酸化セリウム(CeO2)のナノ粒子です。(a)電圧0V(補正なし)と比べて、(b)10.6Vを印加することで球面収差による像のボケが改善され、原子構造を観察できるようになっています。像中の明るいコントラストがセリウム原子列を表しています。
 以上の結果が示すように、本開発装置を用いることでボケが補正され、電子顕微鏡の分解能が向上できることが確認されました。本技術は、上述したSTEMだけでなく、走査型電子顕微鏡(SEM)等あらゆる電子顕微鏡に適用できます。さらに、他のビーム応用機器(電子ビーム露光装置など)の精度・分解能向上にも応用可能であり、多くの産業分野への波及効果が期待できます。

図1.(a) 開発した装置の電極構造の模式図、(b) 開発装置の外観写真、(c) 開発装置を電子顕微鏡に搭載した状態

図2.酸化セリウムの電子顕微鏡像
(a)電圧印加なし
(b)収差補正状態
 (画像処理によりノイズ除去済み)


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