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骨結合性を大幅に向上させた金属系バイオマテリアルの開発に成功 〜人工関節や歯科用インプラントへの幅広い活用に期待〜

本研究の【概要詳細

1.現状と課題
 生体用のチタンは、人工関節、人工椎体および歯科用インプラントとして使用されており、特に人工関節材料の中で60%と最も使用されている材料です。しかし、チタンには直接骨と結合する性質である生体活性能がないために、上記インプラントが15〜20年経過後に弛みが発生する一つの原因として考えられています。 チタン自身に生体活性能を付与し、弛みを抑制することが必要です。一般に、骨と結合する材料は、生体内に埋入すると、その表面に骨と同じ無機成分である水酸化アパタイト(HAp)を形成する能力が高く、更に骨芽細胞の活性が高いことが知られております(図2左のポンチ絵)。このように、早期に骨と結合すれば、感染症のリスクも減少することが期待されます。
 以前我々は、チタンを極微量の酸素を含む窒素雰囲気中で熱処理し、改質層を形成させると、従来の空気中で熱処理した場合に比べて擬似体液(注4)中におけるHAp形成能が高いことを明らかにしました(図2右)。しかし、HAp形成能が向上する原因に関しては明らかではありません。そこで、本研究では、改質層の形成条件を変化させることによって、HAp形成能を制御する要因を明らかにし、さらに骨芽細胞活性に与える影響を調べることを目的としました。

図1 左. 高い生体活性能を持つ材料と
骨との結合。
図1 右. HAp形成能の比較
(開発技術と従来技術)。


2.研究成果
 チタンを低酸素分圧下の窒素中で熱処理する条件を変化させるだけで、表面ゼータ電位をプラスまたはマイナスに制御することができました。この表面ゼータ電位発現の原因は、ルチル型の酸化チタン(改質層)結晶格子の中に、窒素を含む欠陥が出来たためと考えられました。窒素を含む欠陥の種類を実験と第一原理計算(注5)によって調べた結果、表面ゼータ電位がプラスの場合には、(N2)o+2、マイナスの場合には(NO)o-1であることを明らかにしました(図3)。表面ゼータ電位と窒素含有欠陥の極性が定性的に一致しており、表面ゼータ電位の制御を、窒素含有欠陥の状態を変化させて実現した初めての方法です。
また、表面ゼータ電位がプラスまたはマイナスに大きい表面上では、高いHAp形成能を示し、その値がゼロに近づいていくと、HAp形成能は低下する傾向を示しました(図2)。さらに、骨芽細胞活性能に関しては、プラスまたはマイナスの表面ゼータ電位を示すN-TiO2表面上では、未処理のTiと比較して、約2倍の能力向上を実現しました(図3)。


図2. 酸化チタン改質層の表面ゼータ電位とHAp形成能の関係



図3. 表面電位の異なる改質層(N-TiO2)上での生体活性能向上 (培養期間:14日)


3.今後の展開
 本成果を基にし、生体用チタン合金への生体活性付与に関する研究を進めていきます。チタンより、骨と近い強度や弾性率を有するチタン合金に生体活性能を付与でき実用化されれば、支援・介護の原因となる歩行障害を防止し、健康寿命延伸、生活の質(QOL)維持・改善になり、結果的に国民の健康向上、医療費の削減、労働力の確保に繋がると期待されます。


【用語説明】
(注1) 生体活性能
  骨と結合する性質。骨の中に埋め込む人工材料には、生体活性能が必要である。
(注2) 水酸化アパタイト
  骨は、コラーゲンと水酸化アパタイトから成る複合体。骨の中の無機成分が、水酸化アパタイト(HAp)である。
(注3) 骨芽細胞
  骨の中にある細胞の一つ。骨の中には、骨芽細胞と破骨細胞がある。破骨細胞は、骨を吸収(減らす)するが、骨芽細胞は骨を作る細胞。骨芽細胞活性が高いと、生体内で骨形成を促進する。
(注4) 擬似体液
  ヒトの体液とほぼ等しい無機イオン濃度を有する水溶液。この溶液を用いて、人工材料上にHApが形成されると、生体内でもHApが形成される能力を持つ。動物実験等を行わなくても、実験室でHAp形成能を評価可能な溶液。
(注5) 第一原理計算
  物質中の原子の配置情報のみを与えることで量子力学の原理に基づき経験的なパラメーターを用いること無く電子状態、化学結合、エネルギー状態を計算する手法。


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研究担当者
材料技術研究所 高信頼性材料グループ 橋本雅美

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