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金属電極/固体電解質界面に形成されるイオンの空間電荷層の観察に世界で初めて成功!

本研究の【概要詳細

 一般財団法人ファインセラミックスセンター(以下、JFCC)と国立大学法人名古屋大学(以下、名古屋大学)は、電子線ホログラフィー※1と位置分解電子エネルギー損失分光法※2を用いて、金属電極/リチウム(Li)イオン伝導性固体電解質※3の境界面で形成されるイオンの空間電荷層※4(Ionic Space Charge Layer)を世界で初めて観察することに成功しました。


 Liイオン伝導性固体電解質(以下、固体電解質)は、全固体Liイオン電池※5の電解質※6として必須となる材料です。全固体電池内部の電気化学反応は、電極と固体電解質の境界面(以下、界面)のナノメートル領域で起こっており、界面の電気的特性を正しく評価し、それを制御することが全固体電池の性能向上のために極めて重要です。2つの異なる物質が接するとその接合界面に電荷が滞留する層(「空間電荷層」)が形成されます(図1)。この空間電荷層は、界面を通過する電子やイオンの流れに影響を及ぼすため、電子デバイスや電池の特性を決定づける要因のひとつです。しかしながら、イオンの空間電荷層をナノスケールで直接観察した例はなく、その空間分布の詳細は不明でした。

 そこで、本研究では、JFCCが独自に改良してきた高精度高分解能電子線ホログラフィー技術と位置分解電子エネルギー損失分光技術および、昨年、研究グループが新しく共同開発した電子顕微鏡用試料作製技術(Nano-Shield※7技術)を組み合わせることにより、金属電極(Cu)/固体電解質のモデル界面に形成されたイオンの空間電荷層を世界で初めて可視化することに成功しました(図1(b)に模式図を、図4、図5に実験データを示す)。その結果、Liイオン(正電荷)が電極と固体電解質の界面に沿って約10 nmの厚さで滞留しており、それにともない電位分布が急峻に(電位差:1.3 V)変化していることが観察できました。

 この直接的かつ定量的な観察により、界面における固体イオニクス※8の学理構築に繋がります。それを元に全固体電池の高効率化、長寿命化に向けた界面の設計や制御が可能となり、電池の研究開発に拍車がかかるものと期待できます。また、今回開発した観察技術は、Liイオン伝導性固体電解質だけでなく、その他のイオン(ナトリウムイオン、フッ素イオン、水素イオン(プロトンまたはヒドリド)、酸素イオン)が伝導する固体電解質にも応用展開でき、全固体電池だけでなく固体酸化物型燃料電池※9、各種の酸素センサーや電気化学素子など、高性能な固体イオニクスデバイス全般の研究・開発に大きく寄与することが期待されます。

図1 (a) 金属/半導体界面では、電子または正孔が滞留する。
(b) 金属 (Cu) /固体電解質(LASGTP)界面近傍では、
  Liイオンが滞留し空間電荷層を形成することがわかった。


 本成果は2019年3月12日に、応用化学分野で高いインパクトファクターを誇るドイツの学術雑誌「Angewandte Chemie International Edition」の電子版(DOI: 10.1002/anie.201814669)に掲載されました。なお、本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金(JP 17H02792)の支援を受けて行われました。

【用語説明】
※1) 電子線ホログラフィー
  ナノメートル領域の電位分布や磁束分布を定量的に観察できる透過型電子顕微鏡技術のひとつ。電子の波の性質を利用した干渉計測法であり、試料内部の電場、磁場により変調された電子波(物体波)と真空部分をそのまま通過した電子波(参照波)を干渉させ、その干渉パターンから画像解析を経て、電位分布または磁束分布を画像化することができる。
※2) 位置分解電子エネルギー損失分光法
  電子顕微鏡内で加速された入射電子が試料を透過する際、元素の種類や試料中の原子の配列によって電子のエネルギー損失が異なる。そのエネルギー損失の分布(電子エネルギー損失スペクトル)を用いて、元素の種類や試料の電子状態を計測する方法を「電子エネルギー損失分光法」と呼ぶ。試料の異なる位置から電子エネルギー損失スペクトルを取得し、元素の分布や電子状態の空間的な分布を得る方法を「位置分解電子エネルギー損失分光法」と呼ぶ。リチウムのような軽元素を検出するのに有効な観察技術である。
※3) Liイオン伝導性固体電解質
  Liイオンのみが移動できる固体の材料(本研究では、セラミックスを使用)。全固体Liイオン電池の正極と負極の間に挿入することで蓄電池として動作し、全固体電池に必要不可欠な材料である。
※4) 空間電荷層
  異種材料の界面や粒界などで局所的に正電荷または負電荷が溜まった領域のことを言う。
※5) 全固体Liイオン電池
  Liイオン電池は、正極と負極の間をリチウム(Li)が移動することで充放電を行う。電解質に固体材料をもちいたLiイオン電池は「全固体Liイオン電池」と呼ばれる。
※6) 電解質
  溶媒中で陽イオンと陰イオンに電離する物質。Liイオン電池ではこれまで溶媒として液状またはゲル状の電解質がもちいられてきたが、安定性、信頼性、エネルギー密度、出力、動作温度の面で課題があり、固体化がもとめられていた。
※7) Nano-Shield
  試料からの漏れ電場を遮蔽するために試料全体を覆う厚さ数10ナノメートルの遮蔽膜。著者らのグループにより新規開発した。詳細は、Y. Nomura, K. Yamamoto, T. Hirayama, K. Saitoh, Microscopy 67 (2018) 178-186. に記載。
※8) 固体イオニクス
  固体材料中のイオンの振る舞いや、用途に関する研究分野である。全固体電池や固体酸化物型燃料電池などの研究に重要な学問である。
※9) 固体酸化物型燃料電池
  固体電解質をもちいた燃料電池。通常すべてセラミックスで構成される。高温で可動し、発電効率が高いのが特徴である。


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研究担当者
ナノ構造研究所 電子線ホログラフィーグループ 山本和生

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