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世界初!遮熱コーティング材料にナノドメインを導入し、遮熱性の大幅改善を実現! 〜 次世代航空機エンジンの燃焼効率向上に向けて大きく前進 〜

本研究の【概要詳細

1.現状
 航空機エンジンの燃焼効率向上(CO2排出量削減)を図るためには、タービン入口温度の高温化が有効です。しかし、タービンを構成するノズルやブレード等に使用されている耐熱合金は、その耐用温度を遙かに超える燃焼ガスに曝されるため、大量の圧縮空気による冷却が不可欠です。そこで、耐熱性に優れる部材を用いて、圧縮空気量削減と燃焼制御技術の高度化を図ることにより、燃費とNOx排出量の削減が精力的に行われてきました。その一つに、低熱伝導性に優れる耐熱性酸化物を合金表面にコーティングし、部材内部への熱の流入を抑える方法(遮熱コーティング注1)があります。一般に、酸化物を低熱伝導にするには、熱伝導を担う波動性を有するフォノン(注2)の伝播を乱す散乱箇所を導入する方法がとられます。そのため従来の遮熱コーティング素材の低熱伝導化については、結晶学的に隙間が多い構造の耐熱性酸化物を対象に原子レベルのフォノン散乱による遮熱性向上が検討されてきました。しかしながら、この手法には限界があり、新しいアプローチが切望されていました。


2.本研究の成果
 この度、JFCCは、トーカロ株式会社と共同で、結晶学的に隙間の多い耐熱性酸化物に対して、原子よりも少し大きな「ナノサイズのドメイン」(注3)を自発的に形成することで、ドメイン界面におけるフォノン散乱による低熱伝導化を検討しました。カチオン欠損型ペロブスカイト(注4RTa3O9R:希土類元素)の一つであるYbTa3O9を作製し、高分解能STEM像や電子回折図形(注5、6)を観察・解析したところ、図1に示すように、数nmサイズの規則的なドメインが形成されていることが明らかとなりました。熱伝導率を測定した結果、現行遮熱材を大幅に凌駕する低熱伝導性が得られました。ナノドメイン形成による遮熱コーティング素材の低熱伝導化は “世界初”といえます(詳細は次ページ以降で説明)。

図1 YbTa3O9の高分解能STEM-ABF像
(注5)(<001>晶帯軸入射に近い条件)

3.今後の展開
 航空機エンジン向けに適用されている高温部材の表面温度を、現状の1200℃から1400℃レベルまで高めるべく、遮熱性に優れた革新的遮熱コーティングへの適用を目指していく予定です。


本研究成果は、下記に開催する2019年度JFCC研究成果発表会で発表しました。
   7月12日(金)(名古屋会場:愛知県産業労働センター(ウインクあいち2F、5F))
   7月19日(金)(東京会場:東京大学 武田先端知ビル 武田ホール)

本研究は、防衛装備庁平成30年度安全保障技術研究推進制度委託事業の一環として、トーカロ株式会社と共同で実施したものです。

【用語説明】
※1) 遮熱コーティング
  航空機用エンジンや火力発電プラントのガスタービン高温部材の金属基板上に施工されるコーティング層で、耐熱性の高い金属結合層と、低熱伝導性を有するセラミックストップコート層から構成される。現状では、セラミックス層としてイットリア安定化ジルコニアが採用されている。このセラミックス層をガスタービン高温部品の表面に施工して、金属基材温度を100〜200℃程度低下させることにより、燃焼ガスの高温化と基材の長寿命化を可能としている。
※2) フォノン
  固体において、熱は波動性を持った格子振動が伝播することにより伝わるが、フォノンはこの格子振動を量子化した粒子、即ち熱伝導を担う基本単位といえる。このフォノンの固体中における伝播を散乱させることができる場所として、粒界や異相界面、原子空孔、置換元素等が挙げられる。
※3) ドメイン
  固体において、原子が規則正しく配列し、結晶の周期性が保たれている領域をドメイン、結晶の周期性が変化する界面をドメイン界面と呼ぶ。
※4) カチオン欠損型ペロブスカイト
  RTa3O9R:希土類元素)で示される酸化物。BaTiO3(チタン酸バリウム)のように、ABO3 という3元系からなる遷移金属酸化物の結晶構造において、A元素の2/3が欠損した構造の酸化物である。カチオンの欠損率が極めて高く、原子レベルのフォノン散乱場所が多量に導入された遮熱素材といえる。
※5) STEM-ABF像
  Annular Bright-Field Scanning Transmission Electron Microscopyの略称で、環状検出器により透過ビームの周辺部に散乱された電子を用いて明視野STEM像を取得する手法である。高角度散乱環状暗視野(High-Angle Annular dark-field: HAADF)法に比べて、ABF法で得られる像は原子番号の違いによる強度差が小さいので、軽元素と重元素が混在する結晶の原子コラムの観察に効果的である。
※6) 電子回折図形
  透過型電子顕微鏡 (TEM)等を用いて、試料に電子を照射して干渉パターンを観察することにより物質を研究する手法であり、固体の結晶構造の解析に用いられる。


本研究の詳細はこちら
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研究担当者
材料技術研究所 高信頼性材料グループ 松平恒昭

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