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 この成果は、JST-ALCA(先端的低炭素化技術開発事業)プロジェクト「輻射熱反射コーティングによる革新的遮熱技術」の一環として、横浜国立大学、岐阜大学、東京大学との共同研究により得られたものです。
 本研究は、次世代航空機用エンジン用の耐熱軽量部材として注目されているSiC繊維強化SiCセラミックス複合材料(CMC: Ceramic Matrix Composite)に、優れた耐酸化性と輻射熱を反射する機能を有する耐環境性コーティングを施すことにより、エンジン内の高温輻射熱を閉じ込め、かつ、CMCの耐食性も同時に向上させることを目的として実施しております。

 高温の輻射熱を反射する機能は、i) 屈折率差が大きく、かつ、ii) 高温でお互いが反応しない二種類の耐熱性酸化物を交互に積層させることで、電磁波の干渉効果により発現します。本研究では、この積層コーティング膜が1300℃で使用されることを想定し、上記条件を満たす組み合わせとしてY2Ti2O7とa-アルミナを選定しました。コーティング全体としての構成は、CMC基板側から順にCMC/ムライト結合層/[アルミナ/Y2Ti2O7]nとなります。
 積層コーティング膜は高温において優れた構造安定性が求められます。この膜が多孔質であると、高温において焼結収縮するため膜中に引張応力が発生し、その結果として、膜が破壊し保護膜としての機能が消失することが懸念されます。言い換えれば、この膜には、成膜段階で既に緻密質であることが求められます。我々は、この問題を解決することが期待される成膜法の一つとして、エアロゾルデポジション(AD)法に着目しました。
 AD法は、セラミックスや金属粒子を窒素ガスなどに分散させてエアロゾルとし、それを高速で基板に衝突させ、そのときの衝突エネルギーにより、緻密質で密着性に優れた膜を得ることができる成膜法です。これまでは、この特徴を最大限に活かすべく、耐熱性に劣る基板上へのコーティングや、コーティング後の焼き付けを必要としない低コストプロセスを目的としたものがほとんどであり、高温使用を想定した部品への適用はありませんでした。このような背景のもと、我々は、上述した輻射熱反射膜へのAD法の適用可能性検討の一環として、AD法により成膜した膜の高温環境下での安定性や組織変化などについて調べてきました。その結果、AD法により、アルミナ膜の集合組織が形成されることを見出しました。

 例えば、ムライト基板上に成膜したアルミナ膜を高温で熱処理し、アルミナ膜の結晶方位を測定した結果、底面が基板の表面方向に対して平行に配向していることが明らかとなりました。アルミナの代表的な結晶面のうち、底面は表面エネルギーが最も小さいことから、底面配向したアルミナ膜は、化学的安定性・機械的強度・耐摩耗性に優れることが知られています。したがって、このような配向膜は、我々の目的とする耐環境コーティングに加えて、切削用工具コーティングへの適用等が期待されます。研究成果発表会では、アルミナ膜の集合組織形成に及ぼす基板の種類、成膜後の熱処理等の影響について報告します。

 本研究成果は、7月4日(東京:東大武田ホール)、7月11日(名古屋:愛知県産業労働センター(ウインクあいち))及び7月25日(大阪:大阪大学中之島センター)に開催するJFCC/2014年度研究成果発表会で発表しました。

用語説明

・エアロゾル:分散媒が気体の分散系で、気体の中に微粒子が多数浮かんだ物質。

高輻射熱エネルギー反射機能を持つ
高温用耐環境コーティングの構成図
エアロゾルデポジション装置の概略図

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