2020年度

JFCC研究成果集

マテリアル革新力を支える新材料開発と先端解析技術

1研究成果 / 革新複合材料・機能材料

R-1

2020

耐熱性酸化物保護膜中の物質移動機構解析

課題

高温酸化雰囲気下で使用される耐熱部材の表面に付与する保護膜中の物質移動を制御することで、部材の耐久性の大幅向上が期待できる。しかし、保護膜中の物質移動機構が明らかでないため、保護膜の改良は試行錯誤的にならざるを得ない。

解決手段

組成幅のほとんどないラインコンパウンド保護膜(Al2O3、Yb2Si2O7、Yb2SiO5)について、高温の酸素ポテンシャル勾配(dµO)下に曝された膜中の酸化物イオンの粒界拡散に及ぼすdµO印加の影響を明らかにする。

成果・新規性

・粒界密度の大きな多結晶膜の場合、表面近傍の酸化物イオンの粒界拡散がdμO印加により抑制!

・上記抑制効果は、体拡散に対して粒界拡散しやすい酸化物ほど大

⇒表面粒界近傍における酸素分子の取り込み(イオン化)により誘起される表面電荷・空間電荷の大きさが、表面粒界密度に強く依存することを示唆

Al2O3膜(多結晶、Σ31双晶)を1600℃のdµO下に4h曝した後の膜断面の18O分布
1400℃における膜の高酸素分圧側表面近傍の酸化物イオンの粒界拡散に及ぼすdμO印加の効果

期待される市場・応用

・次世代航空機エンジン、発電用タービン、並びに、各種熱処理炉等の高温の過酷環境下で使われる耐熱部材の耐久性向上のための保護膜設計

発表文献

M. Wada et al., Acta Mater. 135 (2017) 372-381.
T. Matsudaira et al., Acta Mater., 151 (2018) 21-30.

謝 辞:本研究の一部は、JSPS科研費新学術領域研究「機能コア科学」(JP19H05792)および文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム (課題番号JPMXP09A19UT0035)の支援を受けて実施されたものである。