プレスリリース

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 九州大学エネルギー研究教育機構 (Q-PIT) および稲盛フロンティア研究センターの山崎仁丈教授は、一般財団法人ファインセラミックスセンターの桑原彰秀主任研究員、Craig Fisher 主任研究員、九州大学稲盛フロンティア研究センターの兵頭潤次特任助教、宮崎大学工学教育研究部の奥山勇治准教授、カリフォルニア工科大学およびノースウェスタン大学の Sossina Haile 教授らと共同で、300~600°Cの中温度域で動作する固体酸化物型燃料電池 (SOFC) 注1) のプロトン(H+)伝導性電解質 注2) における伝導度を決定する新規パラメータを見出し、アクセプター 注3) 置換ジルコン酸バリウムにおけるプロトン伝導度の予測に成功しました。これは、計算と実験の融合研究による成果です。様々な金属酸化物に対して網羅的に本パラメータを計算することで、コンピュータを活用したプロトン伝導性材料開発の加速化が期待されます。
 金属酸化物にプロトン伝導性を発現させるためには、構成元素の一部をアクセプター元素で置換する必要がありますが、どのような元素を選択すればプロトン伝導度を最大化できるかわかっていませんでした。
 本研究グループは、ジルコン酸バリウム (BaZrO3) を対象とし、置換元素と酸素原子および水素原子との親和性がどのように変化するか、第一原理計算 注4) を用いて詳細に調べました。その結果、添加元素と酸素との親和性が高いほどプロトン伝導度が高くなると予測され、6 種の置換元素においてプロトン伝導度を測定した結果、その予測が正しいことを実証しました(図)。

 本研究は、科学研究費補助金(JP15H02287、 JP16H00891、JP18H01694、JP25106008、JP16K06739、JP16H06440)、JST戦略的創造研究推進事業 CREST(JPMJCR18J3)、池谷科学技術振興財団、九州大学 Progress100 の支援を受けました。
 本研究成果は、日本時間 2020 年 7 月 31 日(金)に米国化学会の国際学術誌「Chemistry of Materials」のオンライン速報版で公開されました。

(図) 添加元素に隣接する酸素空孔と酸素原子の親和エネルギーが負に大きくなるほど中温度域におけるプロトン伝導が高くなることが第一原理計算で予測され、それを実証しました。
山崎教授

研究者からひとこと:
今回見つけた新規パラメータは、従来、重要と考えられていた水素原子とアクセプター元素の親和性を、思い切って除算することで見つけました。柔軟な発想が大事であることを実感しました。

用語説明

注1 固体酸化物型燃料電池(SOFC)

 固体酸化物を電解質として用いた燃料電池。SOFCは固体酸化物型燃料電池の英語名(Sol id Oxide Fuel Cells)の頭文字を取った略称。様々な燃料電池の種類の中で、最も高いエネルギー変換効率を有することが知られています。700-1000°Cという高い動作温度を下げることで、材料コストおよび運転コストの削減が求められています。燃料電池は水素と酸素を利用した次世代の発電システムであり、水の電気分解と逆の原理によって高効率の発電を行います。

注2 プロトン伝導性電解質

 燃料電池において、プロトン(H+)だけを選択的に通し、電子やそのほかのイオンを通さない緻密な固体

注3 アクセプター

 材料の一部を置換した元素で、母結晶を構成する元素よりも価数が低いもの

注4 第一原理計算

 量子力学に基づいて物質内部の電子の運動をコンピュータの力を借りて計算する方法。計算した電子の運動から、その物質の様々な性質を調べることが可能

論文情報

タイトル:Oxygen affinity: the missing link enabling prediction of proton conductivities in doped barium zirconates

著者名:Yoshihiro Yamazaki, Akihide Kuwabara, Junji Hyodo, Yuji Okuyama, Craig A.J. Fisher, Sossina M. Haile

掲載誌:Chemistry of Materials

DOI:10.1021/acs.chemmater.0c01869

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研究担当者
ナノ構造研究所 電池材料解析グループ 桑原 彰秀(くわばら あきひで)