沿革

History

2005年度~

(1)2005 ~ 2009 年度

 2001年の小泉政権以後、日銀の量的緩和、為替介入により、2008年のサブプライムローン問題をきっかけとする世界同時不況までは、いざなみ景気といわれる緩やかな景気回復が続いたが、2008年には、リーマン・ショックやギリシャ危機により円高へ推移し、輸出の減少、企業の海外流出が進むなど景気は急激に悪化し、企業からの委託を受ける環境は厳しいものとなった。
 政府の研究開発においても、経済産業省では出口指向が一層強調されるとともに企業との共同での研究提案が求められ、受託獲得の厳しさが続いた。

 ものづくり産業の幅広い分野と密接なかかわりがあるナノテクノロジーは、従来型の技術・工学の限界をブレイクスルーする基盤技術として重要視される時代となった。こうした中、産業界・中部5県・名古屋市・政府機関・中部地域主要大学で組織される中部産業振興協議会は、2005年11月にナノテクノロジーの活用により、時代のニーズである解析・評価に特化することで産業振興に貢献する「ナノテクセンター」構想を推進することとした。この構想においては、ナノテクセンターをJFCCがこれまで蓄積してきた有形無形の財産を活かして、JFCCの内部組織として設立することが提案された。

電子顕微鏡棟を増築

 これを受け、2006年3月に中部経済連合会とJFCCは、共同で「ナノテクセンター設立準備室」を開設し、設立に向けた調査検討、長期経営計画の策定等の準備を進めた。そして、2007年4月にJFCC研究所の組織再編を行い、正式名称「ナノ構造研究所」として設立した。
 2007年4月19日には、産業界・中部自治体・経済産業省等の関係者のご臨席のもと開所式を行った。ナノ構造研究所設立時のJFCC常勤役職員は88名で、その内訳は常勤役員5名、ナノ構造研究所10人、材料技術研究所52人、事務局等間接部門21名の体制であった。

ナノ構造研究所設立記念式典

 「ナノ構造研究所」設立にあたっては、その資金は40億円を目標に企業等からの寄付金・中部自治体からの補助金の募金活動を行った。この結果、2006年~2009年にかけて、企業からの寄付金25億8百万円、(財)2005年日本国際博覧会協会からの寄付金4億円、自治体(愛知県、名古屋市、岐阜県、三重県)からの補助金11億円の合計40億8百万円の資金を受け入れた。
 この資金は透過走査型電子顕微鏡(STEM)、クラスター計算機をはじめとした最先端の研究設備の導入に充て、また2007年12月には電子顕微鏡棟を増築した。

① 主な実施事業

 2007年には、企業とコンソーシアムを組み「マルチセラミックス新断熱材料の開発」を5年間の計画で受託し、我が国の二酸化炭素削減と省エネルギーに貢献することを目的に住宅やビルなどの冷暖房および家電製品、輸送機器、エネルギー貯蔵などにおける大幅な省エネ効果をもたらす断熱材料の研究開発を共同で進めた。
 この時期には、日本では産出量が少なく輸入に多くを依存する希少金属の重要性が問われ、省庁横断での各種レアメタル代替プロジェクトが企画される中、JFCCではタングステン、セリウムの使用量低減と代替材料開発のテーマを受託し、関連企業・研究機関と共同で研究を進めた。
 また、この時代は中部経済産業局をはじめ地域の経済産業局が募集を行う中小企業振興を目的とした地域イノベーション創出研究開発事業に中小企業及び関連機関と共同で提案・受託し、JFCCは管理法人を務めるとともに研究を分担して実施した。制度は戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)等へと発展し、中小企業振興と研究開発の両面で役割を担った。

 2009年には、7年計画の大型プロジェクト「革新的蓄電池先端科学技術基礎研究開発」にナノ構造研究所を中心に参加し、蓄電池性能向上のため電極/電解質界面の解析および蓄電池開発材料の結晶構造・結晶欠陥・組成分布・電子状態・粒界構造等の研究・評価解析を実施している。

 2005年4月には、日本セラミックス協会・日本ファインセラミック協会・フジサンケイビジネスアイと共催する「国際セラミックス総合展」に参画し、JFCC設立当初から開催してきたファインセラミックスフェアからの継承事業とした。以降、隔年の開催に参画し、2015年度からは名称を変更し「セラミックス&ガラス展」として開催することとなった。

AMTC1 口頭講演会場
AMTC1 ポスターセッション会場

 2008年5月には、(財)2005年日本国際博覧会協会からの寄付金により愛・地球博理念継承発展事業として「第1回最先端の顕微鏡と理論計算に関する国際シンポジウム(AMTC1)」を名古屋国際会議場で開催し、これ以降、隔年で本国際シンポジウムを開催している。

 なお、2002年度から特別会計で実施してきた「ナノカーボン応用製品創製(NCT)プロジェクト」は、2005年度に終了し、1998年の「炭素系高機能材料技術研究開発」(FCTプロジェクト)から設けていた東京事務所並びに特別会計は2006年に閉鎖した。

② 財団運営面における特記事項

 JFCCの法人の拠り所である公益法人制度は、明治29年(1896年)制定の民法で位置付けられスタートしたものであるが、行政刷新の一環として110年ぶりの抜本的な見直しとなる制度の大改革が行われた。2006年6月に「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」及び関連法が公布され、2008年12月に施行されることになった。既存の全ての財団法人・社団法人約2万5千団体は、新法に基づく法人へ移行することとなり、その移行期間は2008年12月から2013年11月までの5年間とされた。このため、JFCCでは2007年7月から新公益法人制度対応WGで調査を始め、2008年11月に「新公益法人移行準備室」を設置し、移行のための検討・準備を開始した。
 2010年1月には「抜本的経営改革検討会」を組織し、法人の役員体制の見直しによる新たな機関設計、公益事業と収益事業を区分した事業体系の見直しおよび組織持続の礎となる健全な財務状況確保のための経営改善策の検討、調整、立案を進めた。
 2010年2月には、収入拡大・収益性改善・固定費削減の三位一体の改革による収支改善に着手した。

③ 人事異動、組織、行事等

20周年記念パーティ

 2005年5月、JFCCは設立20周年を迎えた。JFCCの歴史を振り返るとともに今後の更なる発展を期して、記念誌の発行、役職員とOB会メンバーによる記念パーティを実施した。

 2006年4月に種村 榮・名古屋工業大学教授が第5代研究所長に就任した。
 2009年3月に瀬谷博道会長が退任し、後任に庄山悦彦氏((株)日立製作所会長)が第6代会長に就任した。
 2010年3月には、野嶋 孝理事長が退任し、後任に岡本一雄氏(トヨタ自動車(株)副会長)が第4代理事長に就任した。

(2)2010 ~ 2014 年度

 2010年度は、2009年に政権与党となった民主党による行政刷新会議による事業仕分けが行われ、政府プロジェ クト予算の縮小、公益法人への委託排除等のため、政府からの委託研究を受けることが一層厳しい時代となった。 また、2011年3月の東日本大震災やその後のタイ洪水等の影響を受け、企業から研究委託を受ける環境も厳しい状 況が続いた。
 2012年12月に自民党が政権に復帰し、政府の成長戦略の一環として科学技術分野においては、イノベーション 創出を掲げ、「総合科学技術会議」を「総合科学技術・イノベーション会議」に改め機能強化を図るとともにイノ ベーションを生み出すための予算措置が行われた。これらを含めたアベノミクスの実行等で景気も緩やかに回復し た。
 新公益法人制度に基づく新法人への移行について、これまでの検討結果に基づき、2010年6月の評議員会・理事 会で「非営利型・一般財団法人」への移行が決定され、その後の諸準備を経て、2012年2月1日に「一般財団法人 ファインセラミックスセンター」として、新たな機関体制でスタートした。
 2011年3月、「非営利型・一般財団法人」への移行を前提として、2011年度から2015年度の5年間を対象期間 とする第5次中長期経営計画を策定した。

① 主な実施事業

EBPVD

 政府からの受託は、減少傾向にあったが、提案先を経済産業省、NEDOに加え、文部科学省系のJSTなど幅広く行い、多様な受託を獲得し実施した。また、中部経済産業局を中心に地方経済局からの戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)に中小企業や大学等と共同で応募し、多数の受託事業を実施した。
 2014年には、政府の「科学技術イノベーション総合戦略」の一つである国家重点プログラム「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」において、「革新的構造材料」、「革新的設計生産技術」、「エネルギーキャリア」の3テーマを新規に受託し、特に「革新的構造材料」では、JFCCがコーティング技術の研究拠点となり、5年計画で関係機関との連携により研究開発を展開している。

 2007年に設立したナノ構造研究所では、2010年にこれまで不可能とされていた水素原子の観察を「走査透過型電子顕微鏡」を用いて世界で初めて直接観察することに成功した。また、同年ホログラフィー電子顕微鏡を用いて、リチウムイオン電池内のリチウムイオンの分布の観察に世界で初めて成功した。

 1981年に設立されたファインセラミックス技術研究組合(FCRA)については、1987年からJFCCも参画し、「ファインセラミックスの研究開発」(1981~1992)、「シナジーセラミックスの研究開発」(1994~2003)、「セラミックリアクター開発」(2005~2009)及び「高耐熱部品統合パワーモジュール化技術開発」(2012~2014)と各時代の研究開発プロジェクトを運営してきたが、その役割を達成し2015年3月に技術研究組合を解散した。
 JFCCの研究活動の成果を広く公開・普及するとともに受託への展開を目的に名古屋と東京で毎年度開催している研究成果発表会は、2013年度から新たに大阪地区での開催を加えた。2013年には、過去最高の672人の参加者を得た。
 企業受託は、各種の機会を捉えた研究成果やシーズのPR活動、個別企業との技術交流会等の受託拡大活動に尽力したものの、中長期経営計画の目標値を下回る結果となった。
 試験評価受託は、研究受託と同時にPR活動を展開するとともに、試験評価項目の見直し、人員・設備の強化なども行った結果、毎年度受託額を拡大し、2013年度には中長期経営計画の最終年度(2015年度)の収入目標3億円を上回り、2014年度には過去最高額の347百万円の受託額となった。

② 財団運営面における特記事項

 2011年3月には、2011年度から2015年度の5年間を対象期間とする第5次中長期経営計画を策定した。
 公益法人制度への対応と財団の長期的事業継続のため、公益事業と収益事業のバランスをとった事業運営を目指した。研究分野については、現有シーズにおける競争力の高い分野の強化、応用研究領域の強化、先端技術育成研究(自主研究)の推進等による新規研究分野への着手を進めることとした。試験評価については、産業界の基盤技術を支える事業であり、またJFCCの基盤的収益源であるため、産業界のニーズに合わせつつ、強化拡大することとした。
 研究開発事業については、先端技術育成研究(自主研究)によりJFCCの将来の研究の柱となるテーマの実施、これにより生み出された研究シーズの政府プロジェクトへの展開、その成果を企業の個別ニーズへの対応へといった研究開発力の好循環を目指すこととした。
 収益目標としては、中長期計画の最終年度の2015年度には、政府等受託5億円、企業受託5億円、試験評価受託3億円を収入目標とし、2013年度から課税される固定資産税の負担増も織り込んだうえで、収支差黒字とすることを目標として取り組んだ。
 新公益法人制度に基づく新法人への移行は、2011年12月の移行に向けて準備を進めた。2011年6月の評議員会・理事会で、新法人の定款の承認、新機関体制の役員選任等の議決を受け、2011年7月に内閣府へ新法人(非営利型・一般財団法人)への移行申請を行った。その後、内閣府での審査に時間を要したが、2012年1月23日付で内閣総理大臣から新法人移行の認可を受けた。そして、2012年2月1日に「一般財団法人ファインセラミックスセンター」として、新たな体制でスタートした。

③ 人事異動、組織、行事等

 2010年4月、研究ニーズの変化へ臨機応変に機動的に対応することを目的として、研究所をグループ制に変更し、グループ内にはユニットを設置する組織改定を行った。
 2011年3月に東日本大震災が発生したことを契機として、JFCC内に防災対策推進室を設置し、実験室の4S・設備固定、備蓄品の増強などJFCCの防災対策の見直し強化を行った。
 2012年4月に髙田雅介・長岡技術科学大学副学長が第6代研究所長に就任した。情報化社会が一層進展しグローバル化が進む中、機密情報の管理は、研究や試験評価を受託していく機関としては生命線であるため、2012年に機密情報管理WGを設置し機密情報管理体制の強化・徹底を図った。また、2013年には、老朽化した所内ネットワークシステムの全面更新を行い、機能向上とセキュリティ対策を強化した。
 2014年4月、研究分野やテーマが多様化する中、活動の活性化を図りより高い成果をあげるため、研究所のユニットを廃止し、研究所長直属のグループ制により水平連携を図る組織改定を行った。
 2014年度末時点の常勤役職員は87名(うち出向者22名)となった。

戻る

沿革