2011年度

JFCC研究成果集

微構造解析・計算材料設計 研究開発トップへ この分野の一覧へ 2011年度の一覧へ

2011-6

酸化物系固体電解質における点欠陥濃度の第一原理計算


技術のポイント

点欠陥の熱平衡濃度を任意の温度・雰囲気環境下で定量的に評価

基礎研究


背景
酸化物系プロトン伝導体は固体酸化物燃料電池の固体電解質として用いることが可能である。イオン伝導媒介種である固溶プロトンは雰囲気依存性が大きいため、点欠陥濃度を正確に把握する必要がある。

目的
代表的なプロトン伝導体であるペロブスカイト型BaZrO3を対象として、全ての固有点欠陥の形成エネルギーを計算し、気相‐固相の相平衡条件、電気的中性条件を考慮した熱平衡濃度の定量評価技術を確立する。

成果
(1) ドーパント(Y3+など)の置換固溶に関して合成時の相平衡条件によりサイト選択性が変化することを解明。
(2) 通常は同定の困難な陽イオン空孔や逆サイト欠陥などの点欠陥種についても定量的な取り扱いが可能。
  任意の温度・雰囲気分圧下で酸化物中の点欠陥形成挙動の定量評価技術の確立に成功


・計算方法:第一原理平面波基底PAW法 (VASP code) 320原子のsupercellによる点欠陥計算

図. 第一原理計算から得られたBaZrO3の熱平衡点欠陥濃度の酸素分圧依存性。
温度は1600℃、水蒸気分圧0.02 atm。
固相の平衡条件は(左)BaO-rich条件、(右)ZrO2-rich条件。



今後の展開
点欠陥濃度の理論計算方法はあらゆる酸化物材料、実験的に困難な点欠陥に関しても適用可能
点欠陥濃度によって物性が支配される
セラミック材料の評価・解析に応用

謝辞 本研究は、文部科学省特定領域研究「機能元素のナノ材料科学」の一環として実施した。



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