2012年度

JFCC研究成果集

未来開拓研究による環境・エネルギーへの挑戦

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2012-2

酸窒化処理による生体用チタンのアパタイト形成能の向上と安定化


技術のポイント

酸化チタン表面の帯電現象を利用することで、アパタイト形成能を飛躍的に向上させ、しかも、その機能を長時間持続させることが可能

基礎研究


背景
人工関節や脊椎固定具用のチタンに、良好な生体活性能を発現させるための表面処理法としては、通常、酸化後にアパタイト(Ap)形成点数増加のための追加処理が施されるが、その機能が持続しないことが課題であった。

目的
チタンを極微量の酸素を含む窒素雰囲気中で酸窒化することで、生成した酸化チタン表面を帯電させ、Ap形成能の飛躍的向上と機能の安定化を図る。

成果
(1) 低酸素分圧(PO2=10-14 Pa)の窒素中で処理することにより、Ap形成能が最大となる。また、処理材は3ヶ月保存後(室温、暗下)も高いAp形成能を維持した。
(2) Ap形成能向上機構
i) 酸化チタンへの窒素固溶に伴い、酸素空孔が表面近傍に偏在し、正に帯電する。
ii) 擬似体液中において、正に帯電した表面にリン酸イオン(負)が優先的に吸 着し、その後、Caイオン(正)が引き寄せられAp核が形成する。


・酸化: 純チタン(表面:#400仕上げ)、窒素雰囲気(PO2 = 10-16 -104 Pa)、 973K×1h  
・評価: 酸化試料 → XRD、XPS、SEM、ゼータ電位
     擬似体液浸漬試料 → 飛行時間型二次イオン質量分析法、SEM

図1. 酸化材表面のゼータ電位と酸化時のPO2の関係 図2. 酸化材表面におけるAp被覆率(a)と擬似体液浸漬時間の関係



今後の展開
酸窒化処理したチタン合金のAp形成能に
及ぼす合金中の微量元素の影響を評価
実機人工股関節部材への適用

参考文献:M. Hashimoto, K. Kashiwagi, and S. Kitaoka, J. Mat. Sci: Mater Med., 22 (9), 2013 (2011).



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