2017年度

JFCC研究成果集

科学技術イノベーションを推進する革新材料開発と先端解析技術

研究成果/コーティング 研究開発トップへ 2017年度の一覧へ

R-2
2017

表面電位極性を利用した新たな保護膜設計の可能性


技術のポイント

高温酸素濃度勾配下において異なる表面電位極性を発現する酸化物の積層化により、その中の物質移動を制御

基礎研究


背景
高温の急峻な酸素濃度勾配(dμO)に曝される酸化保護膜には、その表面と基板界面における欠陥反応により表面電位が形成されるが、それが膜中の物質移動にどのような影響を及ぼすのかは明らかでない

目的
高温酸素透過法と酸素トレーサー法を用いて保護膜中の物質移動に及ぼす表面電位極性の影響を明らかにするとともに、その現象を利用して新たな保護膜設計の可能性を示す

成果
(1) アルミナ膜の場合は、高dμO印加により電子的伝導の寄与が増大し、高PO2(PO2(hi))側が−、低PO2 (PO2(lo))側が+になる。一方、ムライト膜の場合はイオン伝導を示し、アルミナ膜の場合と反対の表面電位極性を示す
(2) アルミナ−ムライト積層体において、高PO2側にアルミナ薄膜を配置した場合は“酸素遮蔽性と構造安定性が共に向上(物質移動抑制)”するが、逆配置の場合は“両機能が共に低下(物質移動促進)”する



1550℃における酸素透過率の実験値と計算値*の比較
・サンプル: M=ムライト基板[250 μm]、
A=アルミナ薄膜[2 μm]
・雰囲気:PO2(hi)/PO2(lo)=105 Pa/10-4Pa
*計算値:単膜の酸素透過率から算出
(異なる表面電位極性を有する酸化物の積層化の影響を無視)

1550℃×10h後の表面組織



期待される適用分野
・物質移動抑制: 環境遮蔽性、構造安定性に優れる保護膜設計
・物質移動促進: センサーの高感度化 等


参考文献 S. Kitaoka, J. Ceram. Soc., Jpn., 124,1100 (2016).
S. Kitaoka, et al., J. Am. Ceram.,(2017) (DOI: 10.1111/jace.14834).
謝辞 本研究の一部は、JST-ALCA、JSPS科研費新学術領域研究「ナノ構造情報」(JP25106008)、並びに、
文部科学省委託事業ナノテクノロジープラットフォーム(JP12024046)の支援を受けて実施したものである



研究開発トップに戻る